ここ最近、シンガポールでの上場環境がやや慎重ムードになってきたこともあり、マレーシア市場に目を向けるスタートアップや投資家がじわじわと増えつつあります。
資金調達の難易度が上がるなか、上場という出口を地域内で現実的に描ける選択肢として、注目度が高まっている印象です。
実際、2024年のIPO件数は55社に達し、前年比で72%増と大きく伸びました。
なかでも最も注目されたのが、コンビニ・日用品チェーンの「99 Speed Mart Retail Holdings Bhd」。
上場時の時価総額は約138.6億リンギット(約4,435億円)に達し、5.3億ドル(約750億円)の調達にも成功しています。
昨年は、フランチャイズ店舗系の事業や製造業・テクノロジー・消費財分野の上場が目立ちましたが、2025年もすでに20社超が上場済み。勢いは衰えるどころか、むしろ継続・加速の様相を見せています。
(マレーシア市場は、一般企業向けの「Main Market」、成長性を重視する中小企業向けの「ACE Market」、そして初期企業向けの「LEAP Market」の3つに大別されます)
実は今月、日本のベンチャー企業数社とも「マレーシアを出口戦略としてどう活かせるか」というテーマで意見交換を行いました。
一方で、当然ながら“うまみ”ばかりではありません。ローカル市場ゆえの流動性の限界や、ファイナンス規模の見極めが必要になるのも事実です。
そのうえで、IPOは単なる「ゴール」ではなく、地域との信頼関係を“形にする”冠(かんむり)」としての意味合いが重要になります。
ASEANで本気で腰を据えて事業展開していくならば、IPOを「信頼の証」としてどう活かすか――という視座が求められそうです。
また、日本企業にとっては、マレーシア企業との資本業務提携やJV設立を踏まえた事業展開の中で、「上場」という選択肢をどう戦略的に位置づけるかが、より現実的な一歩になるでしょう。
概要
– 新規上場数:55社(前年比72%増)
– 調達総額:74.2億リンギット(前年比107%増)
– 時価総額:313.7億リンギット(前年比130%増)
– 過去19年間で最多の上場数
– ASEAN地域で最も多くのIPOを実施
市場別内訳
– Main Market:11社(前年7社)
– ACE Market:40社(前年24社)
– LEAP Market:4社(前年1社)
主な上場企業(時価総額ベース)
– 99 Speed Mart Retail Holdings Bhd
– Johor Plantations Group Bhd
– Alpha IVF Group Bhd
– Prolintas Infra Business Trust
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