シンガポール隣接という地理的優位性から、ジョホールでは近年、大規模な都市開発・SEZ(特区)・ウェルネス構想・データセンター投資などが相次いでいます。しかし現地を見ていると、「巨大構想」と「実際の都市機能」の間には大きなギャップがあります。中国資本によって建設された大量のコンドミニアムは、コロナ後も空室が目立ち、生活圏として十分に機能していないエリアも少なくありません。現在はウェルネスやシニアリビングなど新たな用途転換も模索されていますが、本質的な課題は依然として残っています。
一見すると、「これから成長する巨大都市」に見えるジョホール。しかし、その内側を見ていくと、マレーシア特有の都市開発・エコシステム形成における課題が色濃く表れています。では、何が起きているのか。深掘りしていきたいと思います。

ここ数年、マレーシア・ジョホール州は「次の成長エリア」として大きな期待を集めています。特にシンガポールとの地理的近接性を背景に、不動産・物流・データセンター・ウェルネス・シニアリビングなど、様々な構想が語られています。
しかし、現地を見ている立場からすると、表面的な華やかさとは裏腹に、かなり根深い課題を抱えているのも事実です。
実は昨年8月、弊社にもジョホール関連プロジェクトのお声がけをいただき、現地視察も行いました。その後も色々と話が入ってはきましたが、現段階では一定の距離を置く判断をしました。理由はシンプルです。「誰が、何に責任を持ち、誰のためのどういう経済圏を形成し、誰が継続的にお金を出し、どのプレイヤーが実務を担うのか」そのグランドデザインが極めて曖昧だったからです。
ジョホールでは過去、中国系デベロッパーによる大規模コンドミニアム開発が相次ぎました。特にシンガポール需要を見込んだ高層住宅群は、当時かなり強気な計画で進められていました。
しかし、コロナによる国境封鎖や経済環境の変化もあり、現在も空室が大量に残るエリアが少なくありません。
現地を歩くと、
という、いわゆる「ハードはあるが、都市として機能していない」状態が見えてきます。これは単なる不動産市況の問題ではなく、「都市設計そのもの」の問題だと思っています。
最近では、フォレストシティの空きコンド群を活用し、
などの構想も出ています。方向性自体は理解できます。特に高齢化が進むアジアにおいて、シンガポール近接という立地は一定の魅力があります。
ただ、問題はそこから先です。
この部分が極めて弱い。結果として、「外資誘致」という言葉だけが先行しがちです。しかし、外資は「呼べば来る」ものではありません。そして、来たとしても、都市の持続性を保証してくれるわけでもありません。


「エコシステム設計」が圧倒的に苦手
これはジョホールだけの話ではありません。マレーシア全体として、都市開発や産業政策において、
の役割分担が曖昧なまま、大型計画が走るケースが非常に多い印象があります。つまり、「箱を作る」「発表する」「外資を呼ぶ」ところまでは得意。しかし、
といった「都市のOS」設計が弱い。結果として、「立派だけど、魂が入っていない都市」が出来上がってしまう。
もう一つ大きいのが、現地住民との距離感です。ジョホールでは、シンガポールからの人口流入、富裕層向け開発、免税エリア構想なども進められています。
しかし、ローカル側からすると、「それ、自分たちに何の恩恵があるの?」という感覚と実態メリットがない、という認識がかなり強いのがリアリティです。
ローカルを優先するという方針がようやく今年になって表に出るようにはなっていますが、実際、地元中小企業や若年層への還元設計は弱く、「外向き」の都市開発になりやすい。都市開発は本来、「住民の支持」が重要です。そこが弱いまま進むと、最終的に熱量が続きません。
個人的には、ジョホールに可能性がないとは思っていません。高速鉄道の開通も27年1月に予定されていますしインフラも整う現実的な計画が出されています。そして、
など、潜在力は非常に大きい地域です。
ただし必要なのは、「巨大構想」ではなく、
という、極めて地味な積み上げだと思っています。
都市は「建てれば完成」ではありません。むしろ完成後からが本番です。そして、そこに必要なのは、単なる資本流入ではなく、「都市を運営する力」なのだと思います。
日本企業も一定の興味を示しているというメディア(NNA)の報道もありますが、とにかく民間セクターと政策が融合してプロジェクトが前に進むことになり、27年以降インフラ整備の具体化から人々の導線が確立されることになればと。。
